まつ毛を伸ばす

認知症の体験談

身近でおこった認知症の体験談


30代前半、主婦が訪問介護ヘルパーとして、認知症の利用者と関わった体験談です。

派遣された先は庭のある大きな純和風の家で、お子さん3人は皆別々に居を構え、老夫婦二人でお住まいとのことでした。

私は週1日だけ、お家の風呂や台所等を掃除した後、奥様(認知症でC型肝炎に罹患)と一緒に近所で買い物や通院をするという依頼でした。

私以外に別の曜日に入っているヘルパーがいるとのことでしたが、ご夫婦があまり気に入っておらず、その人には普段あまり使わない二階の部屋だけを掃除させていると言われました。

ご夫婦は現役時代は社会的地位のあった方で、プライドが高く気難しいとのこと。認知症があっても、人の好き嫌いの判断はしっかりとつくようです。 緊張して訪問しましたが、私のことは気に入って下さったようで、すぐに他の曜日も来てくれと営業所に依頼がありました。

しかし日数を増やせなかったので、最初1時間とっていた私の仕事時間を2時間に増やされました。

その分、ゆったりと買い物ができると奥様は喜んでおられました。 私が子どもの頃にすごした地域は昔住んでいた場所だそうで、私とその話をしていると思い出すので楽しいとおっしゃってました。

ご自身のお子さんが小さかった時の話をよくしておられました。私にとっては穏やかな印象の人です。

1ヶ月程経過すると、最初に訪問した時よりも確実に認知症が進んでいるのが分かりました。 生もの肉や魚等を食器棚に並べている(夏場)。

先週買ったばかりの1リットルの濃口醤油をまた買う。玄関に大量のクレゾールを撒いている・・・。 営業所やお子さん方に相談すると「注意等をせず本人の気の済むようにして下さい」という答えでした。

それを聞いて、私の仕事時間がすぐに増量された(介護度が上がった)ことと合わせ、奥様の余命はあまり長くないと察しました。 指示されたこと・頼まれたことには反論せずに介助をしていました。 どんどんと台所に積まれている米や調味料が増えていき、床には明らかに作りかけの食材が散らかっています。それを黙々と掃除しました。  

私が訪問するようになって3ヶ月目くらいに、奥様にメモを渡され「この本を買って来て」と頼まれました。 しかしメモに数文字書いてあるようですが読めません。「花」の漢字がかろうじて分かりました。

の本かたずねると、「園芸雑誌で」「花の本」と答えられるのですが、それだけでは情報が少なすぎます。

自分の要求を説明できない奥様は、「ずっと通ってる本屋だからそう言ったら分かるから!」と私を怒鳴りました。 奥様から、今までより一層の焦りと、ちゃんと言葉にしたいことが出てこない苛立ちを感じました。  指定の本屋さんにメモを見せて奥様の名前を言っても、私と同じように「それだけではどの本のことか分からない」と断られました。

私も他人のお金を預かって買い物に来ているので、適当にものを買うわけにはいきません。
帰って奥様に「本屋さんにも分からないと言われました」と伝えると、しょげて、諦められました。 それが、奥様とお会いした最後になりました。  

私が次に訪問するという前に、営業所から奥様が転倒し、入院したので訪問介護をキャンセルすると電話が入りました。 その2週間後、奥様が亡くなったとの報告がありました。

最後に、奥様の望みの本を理解して探してあげられなかったことを後悔しました。

私の対応が、奥様を傷つけたかもしれない、とも。 「売り切れていましたよ」とか、もっと柔らかく納得できそうな返答を返せばよかったのか、とか。仕方の無いことかも知れませんが、くよくよしていました。  

その後、今度は同じお家で旦那様の介護枠で掃除を続けました。

奥様の仏壇に手を合わさせてもらった時、娘様に、「ヘルパーさんのことをよく話されてましたよ」とねぎらってもらいました。

認知症であったのに、私のことは記憶していてくれていたことが、信頼されていた証拠のように思えて感謝の涙が出ました。  

何度認知症の方と関わっても何をどうすれば正解かが分からずに悩むことが多いです。 その先に死別という別れがあり、後悔してももうつぐなうことができないことも。

分かっていても、毎回必ず利用者に全力で向き合っていると思えるような対応はなかなかできずにいます。認知症・ボケ防止サプリメント


 

まつ毛を伸ばす方法トップページへ